夕焼けのやさしい光と、平たく伸びた薄っぺらな雲。
黄と橙と藍のグラデーション。
絶妙な色合いと光の温かさを、背中で存分に受け止めながら家路を行く。
『家路』とは、どうしてこうも安らかな気持ちになれるのだろう。
阿佐ヶ谷の中杉通りは、夕方になると、東京のどこよりも酸素が濃くなる。
体のすみずみまでゆきわたるよう酸素をいっぱい吸い込んだら、
褪せた水色の歩道橋をゆっくりと上がり、夕日色に染まった通りを見下ろす。
ざわめく木々。
すましたネコ。
スーパーの袋を自転車のかごに詰め、せっせと漕いでいく主婦。
気が付くと、肌にあたる空気の質感がすっかり秋のもので。
暫く経てば、またザクロがエッチな感じに弾け出すことだろう。などと考える。
自然、趣味、食・・・
秋は本当にたくさんのものを所有している。
ふと、心細くなるような、センチメンタルな物足りなささえ。
すべてのものが美しい。
すべてのものが愛おしい。
すべての物事にたいして頷きたくなる。
酔っぱらって、つい自己を見失いたくなるようなー…
そーんな妖しい季節でもあるかなー。