紅茶の中に映った自分の瞳がカップの底に沈んだのを見届けたなら、
柔らかな風に体をしならせた、悦びに咲くあの一輪の
赤い薔薇の花を摘みに行こう・・・。
御茶ノ水駅から職場までの道のりの脇では、生命力をみなぎらせた新緑達が、声を高らかにして悦びの唄を唄っている。
『5月の東京は美しい』
酒を飲むとタダの変態オヤジになる上司が、その風貌にそぐわぬロマンチックな台詞を吐いていた。
しかしその道を上を見上げながら歩いていくと、本当に足が軽やかになるのである。
『5月の東京は美しい』
私は今、『5月の東京』を全身で味わっている。