ネイルを落とし、短く切りそろえた爪先をみつめる。
その子どもじみた指先は、私のありままのような気がして。
ママのカポカポのハイヒールを履いて、顔中に真っ赤な口紅を塗りたくって、
箪笥の奥から引っ張り出してきた長いスカートを、
ずるずる引きずりながらお姫様ごっこをしていたあの頃。
私は一人っ子で、鏡の中の自分とお話するのが大得意だった。
たぶん、それは今でも変わっていない。
あの頃の私の心の状態と、今の私の心の状態は何も変わっていないはずなのに、
ずいぶんと遠くまで来たような気がする。
爪を伸ばすという行為そのものが、まるで背伸びしているかのようで。
それでも、少し自分の唇に馴染むようになった、薄いピンク色の口紅は、
今の私にとって、せめてもの武器。
「女って化粧とかお洒落とかたいへ〜ん。」
そんなふうにきっと、いかにもな台詞を私は口にしたいだけなのだ。