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| 2014.09.20 Saturday | - | - |
受話器の向こうで、深夜の道路をバイクが真っ直ぐに走りぬけていく音。
バイクや車が他になかったのだろう。
音は気持ちいいくらいによく伸びていき、
こちら側にいる私の耳にまできれいに到達した。
受話器の向こう側の世界は、いつだって別世界。
声に手が届きそうで絶対届かないじれったい場所。
自分が今すぐに飛んでいくことができないところ。
ときどき相手の声を通り越して、声の背景に耳を済ませてしまうのは、
一瞬意識がそちらの場所にトリップしたがるから。
そんなこんなで、中身のあるようなないような(多分ほとんどない)
久々の長電話を終えた後、熱いお湯に10分も浸かっていれば、
心臓が体を突き破らんばかりに、内側から胸を叩き始め、
無数の玉汗が顔面中にじんわりと浮き出てくる。
その汗を拭いながら
「さっきの電話、何を話してたんだっけ?」
と思い返してみるが、それがちっとも思い出せない。
たしかに意識が飛んでいた部分があったことは認めるが、
私にとって、電話でのやりとりとは「やりとり」そのものよりも、
「電話での」というところのほうが重要なのだろう。
声とか、その人のいる場所とか、そちらの部屋で流れている音楽とか・・・。
だって、こんなにもうんざりするような日常が戻ってきたにも関わらず、
こんなにも安らかな気分でいられるのは、
日常が再度侵食しきれないほどに、私の中で満たされる何かがあったからに違いない。